変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)とは
症状 (どういう時に痛くなるか?)
変形性股関節症の主な症状は、股関節痛と股関節の動きの制限です。
最初は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。太ももや膝、足に痛みを感じることもあります。
ヨガなどの運動であぐらをかくと、関節の柔らかさに左右差出たりします。(初期は柔らかい時もありますが、だんだん痛みのある股関節が固くなってきます)
進行していくと、体重がかかると痛い、長く歩くと痛い、また歩き方にも変化が出てきます(跛行 はこう)。
夜寝ていても痛むこともあります。股関節を捻ったり曲げたり伸ばしたりして痛みが起こったり強くなる場合は股関節の疾患を疑います。
日常生活動作としては爪切りやしゃがみ込み、階段の使用、長距離歩行が困難になります。
原因と病態
股関節は骨盤と大腿骨からなる関節です。大腿骨の骨盤側の端には軟骨をかぶった半球状の大腿骨頭があります。
骨盤のほうには寛骨臼(かんこつきゅう=臼蓋 きゅうがい ともいう)と呼ばれるお椀状(わんじょう)のくぼみがあります。
寛骨臼のかぶりが浅かったり(寛骨臼形成不全 かんこつきゅうけいせいふぜん)、大腿骨頭(ペルテス病、大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群)が丸くないことで、骨の表面にある軟骨のすり減りや炎症を引き起こします。
遺伝的な原因も報告されています。約8割の患者さんは女性です。 加齢に伴い発生率は多くなりますが股関節の形態が悪いと比較的若い30代頃から痛みが発生することがあります。また肥満も病態の進行に悪影響を及ぼします。
最終的に骨の表面にある軟骨は完全にすり減り、骨と骨がゴリゴリと擦れることになり削れていきます。
診断
診断は単純X線(レントゲン)で行います。関節裂隙(関節のすき間)が減少したり、骨盤や大腿骨頭の形の異常を認めることで診断ができます。股関節を動かすことで痛みが引き起こされれば、痛みの原因が股関節であると判断できます。
末期変形性股関節症の場合は軟骨が全てなくなり骨盤や大腿骨に骨嚢胞(こつのうほう)と呼ばれる骨の穴を認めることが一般的です。
診断を補足したり関節のダメージを把握したりするためMRIやCTが有用なことがあります。
レントゲンで見られる専門用語の意味
・関節裂隙(かんせつれつげき)とは、関節のすき間のこと
・軟骨下骨(なんこつかこつ)とは、軟骨の下の骨のこと
・軟骨(なんこつ)とは、関節にある骨の表面を覆ってる厚さ2〜4mmの組織、血管、神経、リンパに乏しい
・骨硬化(こつこうか)とは、軟骨の下にある軟骨下骨のところまで負荷がかかることで骨の形成がすすみ、骨が異常に増えてレントゲンでは白くうつる
・骨嚢胞(こつのうほう)とは、骨の穴、空洞
・骨棘(こつきょく)とは、骨が変化して骨のとげのように見える
予防(日常生活での注意点)
形態が悪いことが原因であれば股関節の負荷を減らすことが予防として必要になります。しかしながら過度な日常生活の制限は人生の幅をも制限することにもなるので、頃合いを考えながら予防に努めましょう。
過体重や肥満の人は減量しましょう。
貧乏ゆすり(健康ゆすり)が有効であるとの報告があります。
股関節周囲の筋力を鍛えましょう。リハビリで適切な指導を受けましょう。
水中歩行は有効です。
しゃがみ込みや過度なストレッチ(無理に関節をやわらかくすること)は控えましょう。
治療
痛みに対しては痛み止めのお薬やリハビリ加療を行います。
関節面の不適合がおこり、保存的加療が有効でないこともあります。
年齢が比較的若く初期の段階であれば骨切り術や関節鏡手術、末期や高齢であれば人工股関節置換術が選択されることが多いです。
関連する症状・病気
寛骨臼形成不全 臼蓋形成不全
大腿骨寛骨臼インピンジメント
股関節唇損傷